インタビュー

コーチングはマネジメントにも通ずる体系的スキル

今回は、「リモートワークを当たり前にする」というミッションのもと創業時からフルリモートで組織運営を行い、オンライン秘書アシスタントサービス「CASTER BIZ」などを展開する株式会社キャスターの代表取締役・中川祥太さんのインタビューをお届けします。

本インタビューでは、コーチングを受けようと思ったきっかけや理由、実際に受けた感想などについて、お話を伺いました。

中川 祥太 氏
株式会社キャスター 代表取締役CEO
日本大学経済学部中退。在学中に経験したテレフォンアポインターのアルバイトで、年齢も性別も関係のない集団で成果を叩き出す仕組みに衝撃を受ける。
下北沢にて古着屋を経営した後、ネット広告代理店のオプト社に入社。
社内ベンチャーのソウルドアウト社への出向を経て、2012年退職。
イー・ガーディアン社に入社し、大阪営業所立ち上げに従事。
同社では主にソーシャルメディア関連事業を担当。
ソーシャルリスクの専門家として、各種テレビメディアへの出演、連載を持つ。
その後、新設された事業企画部立ち上げの過程でクラウドソーシングと出会う。
日本の市場におけるオンラインワーカーの発展途上な環境にもどかしさを覚え、
28歳で起業を決意。2014年9月 キャスター創業
2020年2月 リモートワークが当たり前になる社会を目指し、リモートワーカー協会設立

 

あまり興味がなかった、コーチングとの出会い

コーチングは当初あまり興味がなく、もしかすると詐欺なのではという認識があったほどでした。弊社のVC(ベンチャーキャピタル)が投資している企業から「特別価格で提供します」と提案を受け、知り合いの経営者もコーチングを勧めていたので、良いものかもしれないなと。

最近流行っているコーチングってどんなものか?と思っていたところに提案が来たので、試しに受けてみることにしたという経緯です。CoachEd(コーチェット、以下CoachEd)(※)もそのときに初めて知りました。

※CoachEd(コーチェット)とは
CoachEdは、株式会社コーチェットが運営する、コーチングを習得するためのプログラム。専属トレーナーであるプロのコーチからコーチングを受けられるだけでなく、3ヶ月間でコーチングスキルを身につけられる。

参考記事:
「質問することは相手を知ること。誰かのことを知りたいなら、コーチングを学んだ方がいい」コーチング習得プログラム「CoachEd(コーチェット)」で得られる質問力とは

受けた印象は、マネジメントに通ずるもの

CoachEdでコーチングというものを受けてみて、正直なところ特別な心境の変化などはありませんでした。しかし、プログラムを通して「なるほど、そういうことをするんだ」というのは理解できました。

実際に受けたものは、専属コーチから受けるコーチングに加えて、自分が相手にコーチングを行うためのスキル習得がセットになっているカリキュラムでしたが、コーチングの骨格を把握するには非常に有効だと思います。

コーチングを受ける側とする側の両側面を体験してみての感想ですが、ビジネスで言えばマネジメントの領域に通ずるものがあります。

コーチングのスキルセットはヒアリング、質問がほとんどです。その2つを駆使しながら、「こういうことですか」など相手の言葉をオウム返ししながら同意する姿勢を見せたり、相手が解決したい問題を明確化します。

見えてきた問題に対しては、相手が本来持っていそうな答えを誘導して後押しをする。誘導尋問とも似ているところがあるかもしれません。

スキルセットに交渉術や心理学なども体系的に組み込まれているので、100%コーチングで誘導するのは危険だなと思っていますが、あまり威圧的にならないように誘導してあげられるのは有効だなと思います。

独自に体系化されたマネジメントスキル

個人的に調べていて分かったことですが、ビジネススキルの中でもマネジメントレイヤー以上のスキルに関しては、実はあまり体系化されてないということです。

相対的に比較してはいないので正確には分からないですが、体系化がされていないものに対して、提供者が考える「いいマネジメント」「他人へのいい接し方」などを総じて「コーチング」と呼び、プログラム化しているのではないでしょうか。

CoachEdに関しては「相手の感情を聞く」「今したいことを聞く」「今後なりたい姿を聞く」など質問のパターンがある程度決まっているので、一通りの展開様式を頭に入れてしまえば、現実的に活用できるという印象はあります。

質問するパターンはこれとこれが必要、こういう流れで話を進めていくとこういう結論に繋がっていく、という体系化はできているように思いました。

ティーチング(教える行為)に移行してしまうことがよくありがちですが、それを強制的に排除しているのは、CoachEdのやり方として非常に面白いと思います。

費用対効果を考える人、サラリーマン経営者には最適

私が受けたのは経営者向けのプログラムで、数十万円ほどのけっこう値段が張るものでしたが、高いお金を払って無駄だったなとは全く思わなかったので、シンプルに費用対効果を考える人であれば受講する価値はあると思います。

コーチングを受ける経営者の観点から言うと、一応マネジメントスキルに直結する部分もあるため習得するとレバレッジがかかりやすく、効果の実感が得やすいものではあります。

また、日本型のサラリーマン経営者であれば特にコーチングが向いている可能性はあります。日常的に合議、意思決定を迅速に行っていかないといけないという課題があるので、メンバーをしっかり巻き込んで意思決定させられる権限分離がされていることを前提にすれば、非常にいいコミュニケーションが図れます。

例えば、はるかに年上の取締役や経営陣と共に意思決定を図らなければいけない2代目の経営者という方にとっては特に有効かもしれないですね。

誰が受けてもいい。ただ……

コーチングは、受ける人の資格をそれほど問わないものと思っています。
ただ、コーチングプログラムを受講した意識の高い新卒社員が、先輩社員にコーチングを行う、といったことは状況としてはあり得ても、彼ら自身の成長にはつながらない気がします。

「自分はコーチングできるんだ」のような感じで若いときに変な自信がついてしまうと、スキルの薄い部分に気づきにくくなってしまいそうです。仕事の上で重要なスキルセットを身につけるにはキャリアの始めではなく途中からが良いという印象があるので、ミドルマネジメント以上の方がコーチングを身につけたほうが有効度は高いでしょう。

コーチングのさまざまな側面を知っておくことが重要

実際にプログラムを受けてみると「これは悪用できてしまうかもな』という側面はあるかもしれません。ティーチングと分離しているのは、混ぜ合わせると簡単に人を誘導できてしまうからでしょう。

もし倫理観のない人が使えば、コーチングは凶暴な武器になってしまいます。先ほども言いましたが話を誘導し放題になってしまう。テクニックとしては交渉術や心理学と同じですが、教えられた手法を悪用しようと思えばいくらでもできます。詐欺などに悪用する人たちも実際にいるということです。

コーチングを全社員に受けさせる、という考え方の会社もあるのでしょうが、導入したからといって業績に直結するものではないと個人的には思います。

確かに有効なものではありますが、もし導入しようとするのであれば、ただ受けるだけではなく提供側の立場に立ってみるといいと思います。何かよさそうだから、というイメージ先行で導入するものではないでしょう。

まとめ

コーチングの危険性を踏まえた上で、これから導入を検討している企業や経営者への、中川さんの言葉がとても印象的でした。

コーチングが流行ってるからといって、慌てて導入するのではなく、まずは導入を推進する側がコーチングを自分ごととして捉え、実際に受けてみることが大切です。
単純に、研修プログラムとして管理職に教えて実践させるだけでは、コーチングの効果は限定的になるでしょう。

関連記事