自分に自信をなくしてしまったとき、人はそのとき思いつける自分なりの方法で自信を取り戻そうとします。なかでも、人に思いのままを話してみることは、一番勇気が必要かもしれません。しかしこの人なら話せると決めた人が、否定せずにただ聞いてくれるのであれば、身を委ねてみるのもいいでしょう。
今回は、「遊びのような熱狂で、世界を彩る」をミッションに掲げる株式会社AsobicaのCCOをはじめ、Sansanの個人向け名刺アプリ「Eight」のコミュニティマネージャー、企業のコンサルタントなど幅広く活躍している小父内信也(おぶないしんや)さんに、お話を伺いました。
小父内 信也 氏
株式会社Asobica 取締役CCO
Sansan株式会社 Eightコミュニティマネージャー
20歳から工事現場で働きながら、日夜、音楽活動に没頭。25歳、結婚を機会に大手電子機器メーカーへ入社。社員5000人のうち0.5%しか選出されない社長賞を2度受賞。在職中に中小企業診断士を取得し、2010年、創業初期の名刺管理システムを提供するSansan株式会社に参画。データ化部門責任者を経て、名刺アプリEightのコミュニティマネージャーへ。
2020年より、カスタマーサクセス/コミュニティに特化したツールを開発・提供する株式会社Asobicaで、取締役CCOとして数十のファンコミュニティの立ち上げ、および支援に携わる。
社内でコーチングをしている社員との出会い
工場勤務をしていた20代後半の頃に、3年間で1,000冊くらい本を読んでて。自己啓発系の本に触れるうちにコーチングを知りました。なかでもアンソニー・ロビンズっていう人の本には、企業トップの人を支えているプロのコーチの話が印象的で。当時コーチングってまだアメリカで先行してたんです。一方日本では、商売でコーチをしてる人はごくわずかだけどいて、「タダでコーチングさせてください」ってお願いされて、受けたことがありました。
Sansanに入社して数年経ったとき、Sansanで当時営業をしていた社員の一人が、昼休みにランチがてらコーチングをはじめて。僕自身もちょっとコーチング興味あったので、キャリアで悩んでいたこともあって、その人のコーチングを受けてみたんです。ちゃんとしたコーチングっていうよりも、カジュアルな雰囲気のなかで傾聴してもらえる感じでした。その後も、そういう機会になったら話すことをずっと繰り返してました。
Sansanのフラットオープンな企業風土に救われる
「コーチングってちょっと怪しくないですか」とか、「忙しくてちょっと時間ないです」みたいに、一般的には多分コーチングってそういうふうに捉えてる人が多いと思うんですが、Sansanでは「困ったことがあったら社員コーチに話してみて」っていう文化があります。
今でこそ1,000人規模の大企業になりましたが、入社して数年くらいは社員数も100人程度で、全員が同志のような感じでした。そうした企業風土もあって、社員コーチに話がしやすかったんだと思います。あと当時いたデータ化部門というバックエンドの部署が、数字を追いかける営業部門とは利害関係がなかったことも大きかった。
社員コーチは今人事業務の傍ら、Sansanのコーチングを担当しています。他のコーチをほとんど利用したことないのであまり分からないんですけど、彼はとにかく話を聞くのが上手くて、安心感を与えるタイプだったんですね。自分自身、悩みを人に言うタイプではないので、そういう人がそばにいたのは大きいかもしれません。もし社員コーチがいなかったら、会社を辞めてたかもしれません。話を聞いてくれたおかげで、今自分が手掛けていることの崇高さや価値、自分がやりたいことや早期リタイアという目標、共に働く仲間のよさに気づけました。
ちなみにSansanにはメンター制度があるんですよ。Sansanに新たに入ってきた社員に、ちょっと上の先輩が付くんですよね。メンタリングをそこで受けつつコーチングがまた別でいるっていう体制だったので、すごく働きやすい環境が整っていました。
コーチングのマインドも悩みも本から学ぶ
コーチングというか、そういうマインドに目覚めたのは、実は16歳ぐらいですね。もともと本が好きで、その頃には「小さなことにくよくよするな」っていうリチャード・カールソンが書いた本と、本田健さんの「ユダヤ人大富豪の教え」っていう本を読んでました。今振り返ると、どちらもコーチングの考えに近いところがあったと思います。
コーチングと言われて、具体的に自分が思い浮かべる本は「7つの習慣」と「1兆ドルコーチ: シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」ですかね。
コーチングを受けようとする人や、これから受けてほしい人には、“コーチングとは何か”を理解してもらうための入門書としてこの2冊を読むことも勧めています。プロの経営者でもコーチって必要なんだと思ってもらえるから。
自分自身は、コーチング以外で本を読むことで悩みを自分なりに消化しているんです。例えば、奮い立たせたい時には岡本太郎の「自分の中に毒を持て」をよく読みます。逆に何も考えたくない時はホリエモン(堀江貴文)の本を読むんです。彼は超合理主義なので、読んでるうちに自分の悩みってどうでもいいよなって思えて、すんなり腹落ちできるんですね。
若い頃はネガティブだし、どうでもいいやって投げやりに生きてきました。世の中に対する不満やコンプレックス、自分自身に対する不甲斐なさ、もっとできるだろうと、ずっと鬱々としたものを感じてて。そんな中で家族ができて、家族のために頑張ると覚悟を決めた時に背中を押してくれたのも本でした。朝4時起きて勉強して本読んで、ランチしながら本読んで仕事してっていう生活はしんどかったけど、そのときにはまあ頑張るしかないなっていうのがありましたね。
自分で悩みを抱え込む人はコーチングを
ここ数年、心が病んでしまう人が増えていて、それってやっぱり抱え込みやすい属性の人が多いからだと思うんです。実は自分も工事現場で働いてたころにそんな状況になって。今となってはいい経験したなって思うんですけど、自分のリミットが分かって、凄く強がってたんだな、案外弱いことに気づいたんですね。
そういう自分の経験から、コーチングを利用したほうがいいのは、タイプとフェーズ、タイミングかなと思っていて。タイミングでいうとキャリアに悩んだとか転機で迷ってる、困ってる人はコーチングを利用したほうがいいですね。タイプだと、自分で悩みを抱え込んでしまいがちな人に有効です。悩みを解決できる答えは自分自身の中にあるので、そこで自分を大事にしてるものをちゃんと箱開けてくれる、見つけ直してくれるコーチを見つける。
本や場所でもいいでしょう。自分の本来の姿に立ち返らせてくれるものがあれば、セルフマネジメントできると思いますけど。
あとは人間悩むし、自分のペースを守るのも結構難しい。そういうバロメーターにもコーチングとかコーチをする人っていう存在が必要ですね。自分のペースを維持するのが難しいんだったら、定期的に受けたほうがいいと思います。部下にもよく「社員コーチのコーチングを受けてみな」って勧めてました。だいたい怪訝な顔をされるんですけど。
ちなみに仕事柄メンタリングすることが多いですね。メンタリングもある意味コーチングのようなところがありますが、メンタリングもコーチングも、必要としてる人は多いと感じています。
まとめ
心が折れそうになった時、人は職種や立場を越えて話せる人、頼りにしたい言葉や場所が、どれだけあるだろうかーー。
インタビューを通して、そういう人や言葉、場所がいかにかけがえのないものであるかを、改めて思い知らされました。