インタビュー

経営者には、自分を後押ししてくれる存在が必要

会社経営に携わっていると、社内で起きるトラブルから経営まで、全ての問題に一人で対処しなければなりません。問題を解決したいとき、経営や人事、法律などに明るく、自分の話を静かに聴いてくれる人がいれば、安心して相談できるでしょう。コーチングも、経営者に寄り添ってくれるツールとして、経営者の間で徐々に使われるようになりました。

今回は、ICT企業向けに人材紹介サービスを展開している、株式会社RITANOの代表取締役・藤田弘美さんにお話を伺いました。

経営者の先輩から勧められて

2019年に会社を立ち上げたんですが、思うように経営が上手くいかず、経営者の先輩たちに相談したのがきっかけです。研修やセミナーへの参加も提案されましたが、そちらにはあまり心を惹かれなくて……。「コーチングっていう手法があるよ」と言われて、興味を持ちました。

本格的にコーチングを受ける前に、知人からの紹介とコーチをしている友人、合わせて3~4人に会いました。実はWebのコーチングサービスを調べたことがなくて、自分の周りにいた人から探して見つけました。それでコーチを探すとき、「今ちょっと自信がなくなってて、自分の意思決定に対して自信を持ちたいです」と話をしてみて、「この人なら多分私に自信をつけさせてくれそうだ」と感じた人を選びました。

他にも、私の尊敬する経営者の方へのコーチング経験があったこと、尊敬する経営者の方から「やってみたら」と勧められたのも、大きな決め手になりました。

目標の実行と承認が習慣に

私が受けたコーチングは、コーチからアドバイスをもらうのではなく、自己啓発に近いタイプでした。費用は4ヶ月で月に2回、1セッション5万円でトータル50万かかりました。

結論から言うと、費用対効果はとても良かったです。

意思決定に自信を持つことが一番の課題でした。コーチングを受けることでクリアできるなら正直あんまり高い投資だと思っていませんでした。

コーチングの目標として最初に立てたのは、自信をつけたいっていうところと、ビジネスアイデアを考えて、事業を立ち上げることでした。

日々の目標も立てて、スクワット10回でもいいから毎日筋トレをすると決めて実行に移したんです。実際、コーチングを受けている期間中は、毎日欠かさず筋トレをしていました。

コーチングのカリキュラムに、パワークエスチョンというものがありました。感謝していることや誇りを持っていること、一生懸命になっていることなど、7つの質問の答えを毎回自分に問いかけて、1行でも良いので書きました。書いたものをコーチにメールをするというのを2ヶ月、朝と夜やりました。それが結構ツラかったですね。でも自分で決めたことだし、お金も払ってるんで、最後までやり遂げないとダメだなと思ってやりきりました。

あとはずっとコーチに対して承認する練習をしてましたね。

自分が面倒を見ている社員のいいところを10個書き出して、次のセッションまでに、社員たちに「こういうこと言う」みたいな宿題を出されてっていう内容でしたが、これもまた結構しんどかったです。

しかし振り返ってみると、こういったカリキュラムをこなしたことが一番、自分の自信に繋がっていますね。自分の選択に自信を持つようになったし、人に対しては承認することを意識して、習慣づけたおかげで、社員やお客様からの見え方が変わっていきました。

コーチング自体にも人によって相性や適性がある

私自身はコーチングを受けて本当に良かったなと思ってます。ただ、コーチングって、人に勧めてもハマるハマらないってあるみたいです。コーチを3人ぐらいに紹介したんですけど、ダメっていうか、ちょっとあの人と合わないって全員から言われましたね。

コーチとの相性やコーチングの受け取り方が人によって違うんでしょうね。

自分と合うコーチを選ぶのはとても大事です。コーチングを受ける前に、コーチのバックグラウンド、年齢やコーチ以外の仕事、どういう人をコーチしてきたかなどを私は聞きました。

年齢は、これは人によると思うんですけど、自分と同い年の人はダメでした。かといって、年齢が自分より下だと人生経験が足りなくてセッションを受けるには不安でした。結局10個ぐらい上の人に落ち着きました。

これはあくまで私の主観なんですけど、コーチングだけで仕事してると、視野が狭くなると思います。例えば、「クライアントにさっき言った言葉が刺さってなかったんで、ちょっと別の方法でアプローチしてみるか」って、コーチだけをやってるともしかしたらそういう発想は起きない可能性もあります。なので、コーチ以外にも仕事を持っている人の方が良いと思います。

また、コーチングって絶対否定しないっていう約束があるようで。

やっぱりコーチといえど人なんで、偉そうだったり、「僕(私)はこう思います」という感じでアドバイスをするコーチもいます。だからどんな話をしても、絶対に否定しないコーチを選ぶのがおすすめです。

それから、レストランとかカフェを探すとき、口コミを参考にしますよね。コーチングも同じで、利用する前に、口コミみたいなのがもしあれば必ず確認したほうがいいなって凄く思います。

意思決定を後押ししてほしいときは、コーチングがおすすめ

経営者って相談相手いないじゃないですか。他社の経営者に「うちの会社の業績がさ」って弱みを見せるわけにはいかないし、かといって社員にこぼすのもちょっと違いますよね。

経営者としては、自分の中で決まってる結論に対して後押ししてくれる人を求めてます。相談相手は会社経営の機能としても必要ですし、お金を払ってでもお願いした方がいいと思います。私の場合、経営顧問みたいな人がコーチ代わりになっていて、経営の悩みはその方に今相談してますね。

あとは目標があるけどどうすればいいか分からない人、目標達成の道筋が分からない人もコーチングはおすすめです。

まとめ

戦略やアイデアを生み出し、形にしていくためにコーチを雇ったり、コーチングサービスを利用したりする経営者が増えてきました。コーチの中には人事職や経営者、会社役員といったバックグラウンドを持つコーチもいて、難しい意思決定を迫られることの多い経営者の精神的支柱となっています。

経営者はよく一人で悩みを抱えがちです。悩みを改善し、円滑な会社経営をするためにコーチングを利用するのも一つの方法といえるでしょう。

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